怖い短編集

「オレは、

あいつの気持ちを考えてみた。







歳は三十代前半、

やりたいことが

たくさんあったはずだ……。








深夜に車にひかれ、

痛くて、

苦しくて、

それなのに誰も

助けてくれなくて……」








私は、

浩史の言葉に耳を塞ぎ、

その場から逃げ出したかった。








「きっとあいつは、

苦しみながら、

ひき逃げ犯を憎んだ。







どうしてオレを助けないんだ。







どうしてお前は逃げるんだ。







どうして……、

って」








浩史の言葉の一つ一つが、

私の心に突き刺さり、

私はまるで、

拷問を受けているような

錯覚に陥った。