「和君…?」
首を傾げて名前を呼べば、和君はハッとしたように、瞬きを数度繰り返した。
そして、今度は私が瞬きを繰り返す。
和君の瞳から、ボロボロと涙がこぼれたのだ。
あわてふためいて、どうすればいいかわからず、ただ和君の様子を伺った。
「か、和く…「俺、どうにかなると思う」
…え?
「幸せすぎて、どうにかなるって…ッ」
彼から出たのは、そんな言葉。
「こんな、こんな幸せでいいのかな俺…っ。どうしよう、雪、好きだ…愛してる…」
椅子から立ち上がって、私の元へきた和君は、苦しいくらいに私を抱きしめてきた。
彼の涙が、私の肩を濡らす。
和君、それはね…
ーーーー私の、台詞なんだよ。
強く抱きしめてくれる和君を、私も強く抱きしめる。
ここには今幸せしか存在しなくて、私の瞳からも、涙が溢れていた。
幸せな、涙。
ねぇ和君。いろんなことがあったね。
私たちは、ほんとうにいろんなことを、乗り越えてきたよね。
何度もくじけそうになって、何度も諦めそうになって、
それでも、手を伸ばしたのは…
ーー紛れもなく、その相手があなただったから。
あなただから、私は愛し通すことができたんだ。
あなた以外じゃ、ダメなんだ。
「よかったね、和君の治療が報われたんだよっ…」
「馬鹿、頑張ったのは雪だろ。ほんとうに…ありがとう」
世界一愛しい彼が、そっと私の頬に手を添える。
見つめ合う時がまるで止まっているようで、私は息を飲んだ。
「俺を選んでくれて、ありがとうっ…!」
触れるだけの、愛を伝え合うキスを交わしてから、私は彼に告げた。
「それは、私の台詞だよ」
これからも、きっと私は願い続ける。
ーーー和君だけを、愛させてください。と。
私たちは、互いに見つめ合いながら、笑いあった。
【END】