【完】お前だけは無理。




「バカ親父…急に父親ヅラすんな」



和君は、きっと照れ隠しだろう。そんな言葉を吐く。

けれど、少しの間黙りこんだ後、彼もまた言葉を発した。



「…ありがとう。俺、父さんの子供に産まれてきてよかったよ」

「…っ、和哉」

「再婚も、おめでとう。幸せになって。っつっても、親父は女見る目ないからなー」

「……全く、失礼なことを言う子に育って…」



二人の笑顔は、やっぱり親子だなと思うほど、似ていた。

その光景が微笑ましくて、素敵で、目に涙が滲む。




「で、話ってなんだい?」



…あ、そうだ。

すっかり忘れていたけれど、先に話があるといったのは和君の方。


私、今度は席を外したほうが…



「雪と、一緒に暮らさせてください」



ーーーえ?


出てきた言葉に、驚いて彼を見つめる。

その眼差しは真剣そのもので、私は言葉を失った。


和君…?

わたし、何も聞いてないよ…?


和君は、じっとお父さんだけを見つめ、真剣な口調で話す。



「今、俺はバイトもしていないし、こんなこと言える立場ではないと思うんだ。けど、高校を卒業したら、バイトもする。大学に通いながら、家賃くらいは自分で稼げるようにします」

「和、君…」

「大学も、特待制度をとってみせます」

「……」

「親父が今まで俺に費やしてくれたお金は、働けるようになってから必ず返します。だから、今一人で使っているあのマンションで、雪と暮らすことを許してください」



そんなの、一人で決めるなんてずるいよっ…。