土曜日だったので、今日はいつもより早く和君のお見舞いにやってきた。


今日は、待ちに待った退院の日。15:00には病院を出るから、私も準備を手伝わせてもらうことになっていた。


みんなはまたしても、用事があってこれないと言ったけれど…もしかして、気を使ってる?


そうだとしたら申し訳ないな…。



「雪、俺さ、治療始めることにしたんだ」



そんなことを考えていると、突然、和君はそう言った。



「治療…?」

「不妊治療ってやつ。この病院に専門の先生がいて、やってみることにした」

「和君…」

「俺、やっぱり雪に家族を作ってあげたい。俺も、雪との家族が欲しいんだ」



照れくさそうに笑った和君に、下唇を噛み締めた。

そんなふうに、想ってくれているなんて…



嬉しくって抱き付こうとした時、タイミング良く病室の扉が開かれる。

私は慌てて抱きつくのをやめて、平然を装った。


入ってきたのは和君パパで、あぶなかったー…と、こっそりと安堵の息を吐く。



「親父」


「車持ってきたから。退院の準備手伝うよ」



そう言って、和君パパはこちらに歩み寄ってくる。



「親父、話がある」



その足取りは、和君の言葉によって止まった。


話?…って、私もいていいのかな?

席…はずしたほうがいい?