「だからね…それは、ちゃんとわかってほしい」


ーー忘れ、ないで。


「お母さんは、お父さんを好きだっただけなんだって…お願いだから、それだけは忘れてあげないで」



お父さんの瞳にも、涙が浮かんだ。



「雪…っ」

「はい。おとーさん」



小指を差し出して、微笑む。



「指切りげんまん」

「…っ」

「大丈夫だよ。私も今すっごく幸せだから」



少し前だったら、お父さんの幸せを、喜んであげられなかったかもしれない。

けどね、今は違うよ。



「私を産んでくれて…本当にありがとう」



今は、隣に和君がいてくれるから。

もうそれだけで、この世界の全てを、受け入れられる気がするんだ。



「す、まない…すまないっ、すまない…」


お父さんは、そう言ってわんわん泣き始めた。


「えっ…!あ、謝らないで!お、お父さん〜」

「…もういい。なんか俺も、怒鳴る気失せた」



その後、何故か和君ママも泣き始めて、病室は騒がしくなった。

ようやく泣き止んで、二人はまた遊びにきてねと言って去っていった。






和君と、二人きりに戻る。



「なんでお前はさ…」



二人きりになった、第一声。



「もっと怒ればよかったのに。お前の怒りが収まるまで、俺も怒鳴り散らしてやったっていいと思ってたのに…」



ど、怒鳴り散ら…?え、ええっ…!