俺はそれを知っている。
雪の優しさを、想いを、誰よりも、周りの人を大切にしている雪を…
それなのに、なんで…
どうして、雪がッ…
「てめぇら全員まとめて死ねよ!!!雪のお母さんみたいに、死んじまえ!!!一生雪の前に現れんな!!!」
ーーーーーこんな運命は、あんまりじゃないか。
どうして雪なんだよ。
おかしいだろ、不公平にも程があるだろ。
あいつは、幸せにならなきゃいけない存在だろう?
どうして、他人の都合に振り回される運命の中にいるんだ。
「………雪が、もうすぐ来るんだ…頼むから、全員今すぐ出て行って…」
もう怒鳴る気力もなくて、かすれた声でそう言った。
あと、二時間くらいで来てくれるはずなんだ。
だから…それまで、頼むから頭を冷やさせて。
もう、ほんとうに、なにがなんだかわかんねーんだ…。
「また、連絡するわね…」
母親はそう言葉を残して、みんな病室から出て行った。
一人になって、冷静にいろんなことを考える。
俺はスマホを取り出して、無精子症について調べまくった。
不妊というのは、相手にもたくさん迷惑がかかること。
今は技術が進んで、無精子症の人も妊娠することが可能だが、相手への負担が大きいこと。
何より、治る確率が低いと言われた患者が、治ることは少ないということ。
普通に子供を作ることは、俺には出来ないのだと理解した。

