【完】お前だけは無理。




必死だった。

正直、彼女さえ助かればいいと思った。



俺が死んだりしたら、雪が悲しむに決まっているのに、

それでも、雪を守ることだけを考えた。





目を覚ました時、一瞬自分がどこにいるのかわからなくて、混乱する。

しかし、首を横に向ければ、「ごめんなさい」と繰り返しつぶやきながら泣いている雪の姿があって、俺は理解する。


ーーああ、俺、助かったのか。



「ゆ、き…?」



雪は…?

怪我は、ないか…?


俯いていた雪の顔が上げられ、俺と視線が交わる。


「和、君…」


雪は涙でぐちゃぐちゃの顔で、思わず笑ってしまった。

こんな状況で、そんな姿も可愛いだなんて、思ってしまった俺はバカなのかな?





どうやら俺は何日間か目を覚まさなかったらしく、すぐに来た医者から事件の真相を聞かされた。



「和君…ごめんね、私のせいで…」

「バカ。なんで雪が謝んの?悪いのはあの運転手だろ。それに、庇ったのは俺の意思」



身を乗り出して、雪を抱きしめる。



よかった。

こころからそう思う。



「雪が…無事でよかった。お前に何もなくて…本当によかったっ…」

「……っ」

「…なぁ、今度は俺、雪のことちゃんと守れた?」



あの時は守れなかったけど、今度こそ、守れただろうか?



「和君は…いっつも私を守ってくれてるよっ…」


雪は、俺に一生懸命抱きつきながらそういった。

ああ、愛しい。

雪…俺は本当に、お前だけが愛しいよ。


お前を守るためなら、なんだってできるくらい。





ーーだから、お願い。

今すぐ、時を止めて。



この後起こる悲劇から、目を瞑らせてよ。


頼むから、なんだって差し出すから、何もいらないから…