【完】お前だけは無理。



俺はひどく安心して、同じものを雪に返した。

それにしても、雪のお母さんって案外怖いのか…?

いつもにこにこしてるのに、馬鹿な子はいりませんだなんて酷いこというものだ…。





そして、この時から感じていた違和感が、確信に変わる日がやってくる。




いつものようにピアノルームへ行くと、珍しく先に雪がいた。

俺の方が先に来ていることが多いから、少し嬉しくなる。



「雪っ!…って、お前どうしたの!?」



俺の訪問にこちらを向いた雪。
その顔に、痣があった。



「えへへ…大丈夫だよ」


「いつものことだから…」と付け足して、困ったように笑う雪。

いつもの、こと…?


ハッとして、雪の服を見る。

そういえば、不思議に思っていた。

雪はなぜか、真夏の暑い時にでも長袖を着ていたから。



「ちょっと雪、腕見せて…!」



まさか…。顔が、青ざめる。



「だ、ダメッ…!」


腕を掴んだ俺に、雪は抵抗して離れようとしたが、そんな弱い力で降り解けるわけがない。

長袖を捲し上げると、俺はその下にあった光景に、頭にカッと血が上ったのがわかった。


なんだよ、これ…



いくつも付けられた、痛々しい痣。

雪は見られたくなかったのか、俺から顔を背け、目に涙を溜めていた。