【完】お前だけは無理。



ーー驚いて、言葉が出なかった。


雪が、泣いている。

いつも笑顔だった雪が、だ。



「どうしたの?」



必死に平然を装って、ゆきの頭を優しくて撫でた。

内心は動揺しまくっていて、とにかく泣き止んでほしいという一心だった。


いつも太陽のような笑顔で笑っている雪の泣き顔は、見ていられないほどに苦しかった。

かわいそうでどうにか慰めてやりたくて、大丈夫だよと抱きしめたくなる。


「馬鹿な子は…要らないって…お母さんが…」



雪の口から出た台詞。

…なんだよ、それ。



「雪は馬鹿なんかじゃないよ」



俺は知っている。

雪がどれだけ真面目な子か。


いつもここへ来て、宿題をしてからピアノの練習をしていた。

俺は宿題なんてする子ではなかったから、そんな雪の姿を見て言ったんだ。


『宿題なんて、しなくていいのに』

『だ、ダメだよ!宿題は、するためにあるの!』


必死に俺を説得して、俺にも宿題をやらせた雪を思い出す。