【完】お前だけは無理。



「や、やっぱり下手っぴだったかな…?」

「…っ!違う!!凄すぎて、感動してた…!」



俺の言葉に、雪は驚いたように目を見開く。

そして、今までまた中で1番といっていいほど、嬉しそうに笑った。



「和君、やっぱり優しいね…」



優しいねって、俺がお世辞で言ったと思ってるのか?



「ほんとうだって!!俺ほんとに感動した!!」



雪を表すような、そんな音色だった。

繊細で、温かくて、優しくて…


俺の好きな子は、ピアノまで上手らしい。



「…は?」



そう思って、ハッとした。

好き…な、子?


…いやいや、違うだろっ。雪は二つも年下だし、妹のように、可愛くて…だから…



「和君どうしたの?お顔が真っ赤だよ?」



顔を覗き込まれてそう言われ、俺は雪から顔を逸らした。

いやいや違うって、ほんと。



ていうか、俺は人を好きになんてならない。

あの父親と母親をみて育ってきたんだ。

愛というものが、どれほどに脆いものか、醜いものか、

俺が1番わかっている。


その時は、まだこの気持ちを認めることはできなかった。