【完】お前だけは無理。




"雪"、だなんて名前なのに、雪は太陽のように温かい女の子。

いつも笑顔で、俺のくだらない話を聞いてくれた。

知れば知るほど、雪に惹かれていく自分がいたんだ。




「ここのピアノ教室って、雪のお母さんがしてるんだよな?」

「うん、そうだよ」

「雪もピアノとか弾けるの?」


俺の問いかけに、雪は「少しだけなら…」とはにかんだ。


「弾いてみてよ!」

「へ、下手っぴだけどいい?」


随分と自信なさげな雪に、俺は大きく首を縦にふる。


雪はピアノの前の椅子に腰掛けて、すぅっと深呼吸をした。



空気に馴染むような、優しい優しい音色。

驚くほど、雪は上手だった。

小学2年生で、ここまで弾けるものなのか…?


下手っぴだなんだと言っていたが、充分に胸を張っていいレベルだった。

そして何より、美しい。

流れるようなピアノの音も、ピアノを奏でる、雪の姿も。


俺はそのすべてに見惚れて、間抜けに口を開けたまま、音色に酔いしれた。



「…っと、いう感じ、です…」



演奏が終わり、雪は照れくさそうに視線を下へ向ける。

俺は少しの間言葉すらでなくて、呆然と立ち尽くしていた。