【完】お前だけは無理。




ーーずっと思っていたことがある。



たしかに、母親がしたことは最低だ。
でも、母親だけが悪いのか?

相手にだって、少しは非があるじゃないか。

それなのに、全部こちらに責任を投げ捨てて、結局悪者になるのは俺たち家族のだけ。


責任転換もいいところ。結局人間は、自分以外を責める生き物なんだ。


この女の子も、すぐに俺を無視して、毛嫌いするようになる。

別に…どうでもいいけど。



その時までは、皮肉にもそう思っていて、俺は雪に好意なんて微塵も持っていなかった。



そう、あの日が来るまでは。







マンションの中に、ピアノルームというものがあった。

開放されていて、住居者はいつでも利用可能らしい。

たまたま見つけて、俺はその中に入った。
晩御飯を食べ終わった後、家を抜け出すのが俺の日課。



母親と父親は、家の中で一切言葉を交わさない。

まるでそこには誰もいないかのように、お互いの存在が見えていないんじゃないかとすら思う。

その異様な光景にだけは、俺は慣れることができなかった。