そう、思っていた。
母親が、何も言わない俺に痺れを切らしているのがわかった。多分、そろそろ頭でも叩かれる。俺の親はそういう親。
別に、どうでもいいけど。
案の定、母親が軽く手を振りかざそうとした時、
「私も、初めまして…!白川雪です…!」
相手の女の子が、俺たちに笑顔を向けてきた。
…なんだよ。
なんで笑ってんの、こいつ。
まるで空気を読んだかのような女の子の対応に、母親は気を良くしたのか振りかざした手を下ろした。
「まぁ〜!雪ちゃん可愛ですねぇ!」
「ふふっ、ありがとうございます。和哉君も、将来きっと良い男になるでしょうねぇ」
空気は一変して、母親同士会話に花を咲かせている。
…もしかして。
…助け、られた?
腹がたつ。助けただなんて思うなよ。俺はそんなこと頼んでないし、別に打たれたって痛くなんてないんだ。
だから、そんな笑顔を、俺に向けてくるな。
俺は知っている。最初は仲よさげに繕って、後で本性を知った時、人間は手のひらを返すんだ。
裏切り者だなんだと、罵声を浴びせてくるんだ。

