そして、俺たち家族は新しい地に引っ越した。
何度引っ越したって一緒だ。
今回は、何ヶ月で引っ越すだろうか。
完全に、冷めきっていた。
よくあるマンションの一室。そこが、俺たちの新しい家。
母親は自分が原因でこんなことを繰り返しているというのに、新しい生活に心躍らせた様子で鼻歌を歌いながら荷ほどきをしていた。
どれだけ図太い神経をしているのだろうか。
ほんとうに、頭がおかしい人間だ。我が親ながら、考えていることなんてさっぱりわからなかった。
「さあ、みんなでお隣へご挨拶に行きましょう!」
母親の台詞に、しぶしぶ立ち上がる俺と父さん。
「息子の和哉です。ほら和哉、挨拶しなさい」
母親はそう言って、無理矢理俺の頭を下げさせてくる。
挨拶なんてするものか。
名乗ること自体が嫌だったわけではない。ただ、この母親に従うことが嫌だった。
相手側もきっと、愛想の悪い息子だとでも思っているだろう。
それでいい、どうせお前たちも、手のひらを返したように俺たちを追い出そうとする。
その未来が、俺には目に見えているんだ。

