それがわかったのは、小学校3年生の時だった。
俺は本をよく読む方で、ある日リビングに置かれていた分厚い本を読んだ。
その本は、"浮気"がテーマの小説で、まさに衝撃を受けたのを覚えている。
ーーーお母さんと、一緒だ。
浮気という行為が、どれだけ歪んだことか、醜い人間が犯す行為なのか、
真っ青になりながら、1ページ1ページ、めくり続けた。
ああ、そうか。だからうちはおかしいって言われるんだ。
俺のお母さんがしていることは、"最低"なことなんだ。
俺の中の何かが崩れ、薄暗かった世界はついに、光を失った。
その数日後、母親がPTAの会長と浮気をしたとかで大問題になり、一ヶ月後に引っ越すことが決まった。
引っ越すまでの間、学校ではなかなかに悪質ないじめにあった。
持ち物はいくつも使い物にできなくされ、暴行も受けた。
空手と柔道を習っていたので、抵抗することはできたが、俺はそれをしなかった。
なんだかもう、何もかもがどうでもよかったんだ。
きっと、普通の子供なら耐えられなくなって登校拒否でもするんだろうか。
でも俺は、引越しの前日まで、きっちり学校へ通った。
多分、俺も母親と一緒でおかしかったんだ。感情が欠陥していたから、強がりとかではなく、ほんとうになんとも思わなかった。