きちんと、けじめをつけるべきなんじゃないかと。
家の方向へと向かっていた足を止めると、瀧川先輩は察したように、いつもの笑顔に戻った。
「うわ、行くんだ。俺よりケジメを選ぶんだぁー!」
おちゃらけた表情で、ふざけたような言葉。
けれど、それが彼の優しさなんだと痛いほどに伝わってきた。
「ふふっ、ごめんなさい」
「いーよ。久しぶりに雪ちゃんの笑顔が見れたから、許してあげる」
どうして私にはそこまでしてくれるの?と思ったけれど、きっと優しい人なんだと思う。
私がずっとうじうじしていたから、和ませてくれたんだ。
「さ、行っておいで」
肩を、優しく叩かれた。
「振られたら慰めてあげるから」
「振られると思いますけど、慰めはいりません」
「雪ちゃん、マジで鬼だわ」
もう、迷いはない。
「じゃーね」
「ありがとうございます、瀧川先輩」
私は逆方向を向いて、足を踏み出した。
走って走って、和君のいる病院へ一直線へ走る。
「…はぁ…結構マジ恋だった…散るのあっけねー…」
私がいなくなった場所で、彼がそんなことを、呟いているとも知らずに。
わたしは、全力で走った。