「和君が…私を好き?」
瀧川先輩ってば、冗談がきつすぎる。というか、冗談にもならない。
天と地がひっくりかえったってありえない仮説に、私は困ったように笑った。
「ありえないですよ」
そう、ありえない。
「本当にそう思う?」
それなのに、瀧川先輩の瞳はいつに増して真剣そのもので、思わず言葉を飲み込んでしまう。
「どうにも思ってない女を庇って、身体はれると思う?」
そ、れは…。
返す言葉を、必死に探した。
「それは…和君は私に負い目を感じてただけだと思います…いろいろ、あったので…」
きっと、和君自身もお父さんとお母さんのことを、負い目に感じていたんじゃないって…最近、思うようになった。
だってそれ以外に、和君が私をかばう理由が見当たらない。
必死で考えて、見つけた答えだったのに、
「違うよ雪ちゃん」
瀧川先輩は、あっさりとそれを否定した。
「わかってないのは君だけだ」
私だけ…?
何を、わかっていないって言うの…?
「俺ね、ほんとうは和哉に好きな子が出来たら、横から奪ってやろうと思ってたんだぁ」
突然のカミングアウトに、「え?」と声が漏れた。
「奪って捨てて、和哉をあざ笑ってやろうと思ってた」
瀧川先輩は笑って話しているけれど、全然笑い事じゃない。