和君との思い出を、私だけの中に閉じ込めて、ちゃんと前を向くから…
一人で、歩いて行くから。
ーーここに誓おう。
和君に、もう迷惑はかけないと。
彼から離れると、自分自身と約束しよう。
だって、私がいるときっと、和君はまた危険なことに巻き込まれる。
何度彼を、危険な目に遭わせた?
不幸に、させた?
もう充分、一生一人で生きていけるだけの幸せを、和君からもらったはずだ。
だから…
…この恋はもう、終わりにする。
ーーガチャリ。
「雪ちゃんッ…!」
屋上の扉が開いて、誰かが入ってきた。
…瀧川、先輩?
現れた人物に驚き、涙が引っ込む。
「やっぱり…一人で泣いてると思った」
「先輩…どうして…」
「なんでって…俺、雪ちゃんのこと好きになっちゃったって、言ったでしょ?」
少し前、生徒会室で言われた言葉を思い出した。
「好きな子が泣いてたら、駆けつけなきゃね」
…きっと、ただの冗談。
私を、慰めようとしてくれてるんだ。
ここは笑うところなのに、今はもうそんな力も残っていなかった。
笑顔の代わりに、涙だけが溢れ落ちる。
「もう無理しなくていいから。泣きたいだけなきな」
身体がぐいっと引っ張られ、瀧川先輩の元に引き寄せられる。
抱きしめられているのだと気づいた。
抵抗する力も残っていない私は、されるがまま。
その腕の中で、涙が枯れるまで泣いた。