【完】お前だけは無理。



全身が痛いのか、松葉杖をついてベッドへ座ろうとする和君をお父さんが支えた。

腰を下ろし、和君は私へと視線を向ける。



「雪ちゃん…だよね?」


和君は、私を見つめてそういった。

その瞳は、昨日と変わらない。

知らない人を見る…目。



「ごめんね…俺、何にも憶えてなくて…」



何、にも?



「君と俺は、幼なじみだったって親父からきいたよ」



私に関しての記憶が、全てなくなっているってこと…?

幼なじみだってことさえ、忘れてしまったって、こと…?



『雪は凄いな』

『俺、雪のピアノすっげー好き』

『雪のお母さんが雪をいらないっていうなら、俺がもらってやる』

『俺が絶対、雪を守るから…!』



ーーほんとうに、私と過ごした全ての日々を、忘れたの?



「ほんとうにごめんね…俺、思い出すように努力す「いいえ」



そっか。

忘れたんだ。

忘れ、られたんだねっ…。



「…いいの」



和君の温かい手を握った。