【完】お前だけは無理。




けれど、どこかで期待していたんだ。

何かの間違いじゃないかと、

目を覚ましてすぐだから、混乱しているだけだと。


だって、和君が私を忘れるなんて…ことがある?

毛嫌いしている、私を。



「後遺症もなくて、原因は不明だそうだ…」



そう言って、和君パパは黙り込んだ。


誰も口を、開こうとはしない。

きっと今の私は、とてもみじめでかけることばさえ浮かばないと思う。


当の本人の私も、もう言葉が出てこなかった。



でも、冷静になって考える。


和君は、嫌な記憶も全て、消えてしまったのだろうか。


お母さんのこと、三年前の交通事故のこと、そしてーー私に関しての、憎悪全て。


和君にとっては、夢のような出来事かもしれない。


だって、大嫌いな私を、忌々しい過去を、

もう思い出さなくていいのだから。





病室の扉が、カラララと言う音を鳴らしながら開かれる。

検査から戻ってきたらしい和君が、私たちを見ながら笑った。



「お前たち、来てくれたんだ」



ーーーあ。


痛感する。



本当に、憶えていないんだ。


だって和君は、こんな風に笑わない。

私に、笑顔を向けなくなったのだから。