「よく来てくれたね。和哉は今検査を受けているから、よかったらここで待っているかい?」
あ…検査、か。
よかった…。
みんな、頷いて、病室にある椅子に座らせてもらった。
個室だからか、静かな病室。
誰かが話さなければ、物音ひとつしない。
「雪ちゃん…ごめん」
静寂の中、和君パパの言葉はよく響いた。
心臓が、どくりと音を立てる。
身体中の血の巡りが悪くなったように、身体が冷えて行くのがわかった。
ご、めん?
「和哉…部分的記憶障害、なんだって…」
頭に、強い衝撃が走る。
部分的、記憶障害…。
「何度話しても、雪ちゃんのことがわからないみたいだった…」
和君パパは、申し訳無さそうにそう言って、私から視線をそらす。
部分的…そっか。
私のことだけ、わからないのか。
「お医者さんからは、思い出すかもしれないし…思い出さないかもしれないって…今はなんとも言えない状態らしい」
…覚悟は、していたつもりだった。
今日の朝、和君が私を知らない人だと言ってからずっと。

