【完】お前だけは無理。




私の心臓は、おかしいほどにドキドキしていた。

和君が、私のことを、憶えていますように…。
さっきの出来事は、一時の出来事でありますように…。

きつく瞼を閉じてから、意を決してみんなの方を向いた。



「昨日のこと、話します」



さっき、二人と約束したもんね。

なにも言わず、真剣な目で私を見るみんな。


すぅっと息を吸ってから、吐く息に言葉を乗せる。



「私…風邪で倒れて、和君の家にお世話になってたんです」



歩きながら、話を始めた。



「昨日…和君の家から帰る途中に、元担任の先生に誘拐されました」


楓ちゃんと瞳ちゃんが、「は?」と反応した。

二人は、先生を知っているからだろう。



「先生のマンションに連れ去られて、足と手を縛られて…もう、ダメだって思った時、和君が助けに来てくれて…」

「やっぱり、あいつか…」



楓ちゃんはそう言って、下唇をかみしめる。

瞳ちゃんも、視線を下へ下げた。



「先生が私を人質にとるように、ベランダの外に身を放り出されたんです。先生が手を離したら今にも落ちる体制にさせられて…マンションの、5階でした」



4階だと思っていた場所は、5階だった。

これは、後から警察の人が教えてくれた。