「あ、あはは…おかしいなっ…今日寝不足だから、欠伸でもしすぎたのかなぁ…」
「……雪」
「欠伸したら、どうして涙が出るんですかね?不思議ー」
「…雪っ、やめなさい」
瞳ちゃんは、私を抱き寄せた。
「大丈夫、大丈夫よ…。目覚めたばかりで、正気じゃなかったのよ」
「……」
「和哉君が、雪のこと忘れるわけないじゃない…っ、大丈夫だから」
「…っ」
瞳ちゃんは、私を抱きしめる腕に力を込めた。
その強さに、涙腺は崩壊せざる終えない。
私の瞳から流れたものが、瞳ちゃんの服を濡らす。
『…えっと…どちら様?俺の、知り合いかな?』
和君の目を、思い出した。
「も、もし…ほんとうに、私のこと忘れてたら…」
言いかけて、一瞬喉の奥で言葉が詰まる。
「私、どうしようっ…」
溢れた情けない言葉は、聞こえるか聞こえないか、かすれた小さな声。
「…っ」
瞳ちゃんは、なにも言わず抱きしめる腕の力だけを強めた。
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私たちは、一旦学校へ戻って、授業を受けた。
帰り道、誰も、一言も言葉を発さなかった。
北口先輩は、私と和君が幼なじみだということを知っていたようで、瀧川先輩も、何か察した様子だった。