「和君?どうしたの?」
「雪…!…どう、しよう…」
「…?」
私の方を見た和君の表情は、まるでこの世の終わりを告げられたような悲痛なものだった。
「俺の母さんと雪のお父さんが…駆け落ち、しちゃった…」
駆け落ち?
「なぁにそれ?」
当時小学生4年生だった私には、知らない単語だった。
和君は顔を顰め、何かを考えるように頭を抱えた。
そして、ひらめいたかのように顔を上げて、私の両肩をつかむ。
「…!雪!雪のお母さんはどこ!」
「えっと…もうすぐ、買い物から帰ってくると思う…」
和君、そんなに慌ててどうしたんだろう?