また始まった…。
私は一人、部屋の中でため息をついて、こっそり家を抜け出した。
マンションの中にある、ピアノルーム。
私のお母さんがピアノ教室を開いていて、普段からマンションの住人が使えるように解放している。
お父さんとお母さんの喧嘩を聞きたくない時、私はいつもここに来ていた。
防音用の重たい扉を押して、中に入る。
すると、そこには一人の男の子がいた。
…あれ?
「和哉、くん?」
確か昨日、おうちに挨拶に来た男の子だ。
彼はピアノの隣にあるソファに座り、私を睨むように見ていた。
「…何?」
「お家に帰らないの?」
「…うるさいな、ほっといてよ」
どうしたんだろう?
だって、もう夜の8時だよ?