私の存在など、無かったことにして生きているのだと。
呆然と立ち尽くす私を側に、もう一人の人物が何やら嬉しそうに尋ねてきた。
「あら!和ちゃんが女の子連れ込むだなんてっ…!どうしましょあなた!嬉しいわぁ!」
「ははっ、そうだな。俺も驚いたよ」
私のことを『女の子』と呼ぶこの人が悪魔のように見えて、次第に身体が震え始めた。
…そうか、さっきまでの胸騒ぎはこれだ。
「和ちゃんは留守かしら?ふふっ、初めまして、私は和ちゃんの母親の理恵子(りえこ)です。急に来てごめんなさいねぇ」
「私からも初めまして。理恵子さんの旦那の、拓海(たくみ)です。再婚だから、和哉君の義理の父って感じかな…」
そう言って嬉しそうに自己紹介をした、目の前の二人。
叫びそうになった。
『助けて』と。
誰か、この場から私を連れ出して。
誰かーーー…
「おい…ッ…!!」
マンションの廊下に、怒鳴り声が響く。
横を見れば、焦った顔でこちらに向かい走ってくる、待ち望んでいた人の姿。

