何も疑うことなく玄関へ向かい、ドアの部に手を乗せる。
力を入れて下に下げ、ドアを勢いよく開けた。
その先に、愛しい人の姿はなかった。
「 ーーーーーえ、 」
代わりに、見覚えがあり過ぎる2人の人物が、私の視界を汚す。
声が、出ない。
息が、詰まる。
『どうして』
その言葉が、頭の中を占領する。
必死に混乱する頭を整理する私とは裏腹に、目の前の人物は笑顔で告げた。
「えっと…和哉君いるかな?…もしかして、和哉君の彼女さんかな?」
眼鏡を掛けた男性が、微笑みながら私を見る。
その目は完全に、『初めて会う人』を見るような目だった。
一瞬で、理解する。
この人は私を忘れたのだと。