「私…めい、わく、だから…」
「…家に帰っても一人だろ。そういうのいいから、もう寝とけって」
「…でも…」
「…あー、もう、煩い。病人は黙って休んでろ」
そこまで、言われたら…言い返せない。
本当に面倒臭そうな声色で言われて、ギュッと下唇を噛む。
それにしても…この状況は…。
先ほどまでなら考えられないような非日常過ぎる空間。
和君の、家にいるなんて…。
和君だって、私なんて家に入れたくないだろうに…倒れている人を放って置けないという良心、かな?
だとしたら、申し訳ない…。
今の状態では、帰る体力も残っていないので、大人しく寝かせてもらうしかない。
「和君…」
私の声が聞こえているのか聞こえていないのか、ピクリとも反応しない和君。
「ごめん、なさい…」
「…何が?」
「合唱部のことと、先生のこと、と…こんなふうに、なっちゃって…迷惑かけて、ごめんなさい…」
返事は、帰ってこないだろうと思う。
でも、私が謝らないと気が済まなかったから…。
予想通り、和君からは反応すら帰って来なくて、立ち上がりリビングを出て行った。
残された私は、天井を見つめぼーっとする。
和君、大きな家に住んでるんだなぁ…。
それに、一人暮らししてるんだ…。
お父さんと二人で暮らしていると思っていた。お父さんは…?と、聞きたいけれど聞く勇気はない。