【完】お前だけは無理。




強引に私を引っ張って歩く先生に、不信感が募る。

怖い…離して…。


身体が酷く怠くて、拒否する力も何か言う気力も残っていない私は、このまま先生に連れて行かれるのだろうか。

先生は、本当に私を家に送ってくれるのだろうか。


『お前の担任の松井は、過去に生徒にセクハラして飛ばされた…って、噂がある』


和君が言っていた悪い噂を、今になって理解した。


どうなるんだろう…

どこか冷静な自分に驚きながら、脳裏に浮かぶのは和君の顔。


…っ、嫌だ…




ーーーーーバシッ!!


「…ッ、はぁ…はぁ…離せよクソジジイ…!」



これは、幻聴だろうか。


目の前には、息を切らした世界で一番愛しい人。

世界で唯一愛しい人が、現れた。



「部活に来てねぇと思ったら…こんなところで何してんの?」



幻覚…なの?

ねぇ、どうして。


突き放すくせに、その口は私を大嫌いだって紡ぐのにっ…いつも、いつだって、和君は…


ーー助けに、来てくれるの?



「わ、私はただ…白川がこんなに雨に濡れて帰っていたから送ろうと思っただけだ…!」



目の前にいるのは、本当に和君だろうか。

もしかすると、和君にそっくりな人…?