もう7限も終わった時間。

上級生たちが下校し始めているのが、窓の外に見える。


十分…二十分…和君は、三十分が過ぎても来る気配は無かった。


…当たり前…だよね。


来るわけないか…と思いながら、ショックを受けている自分がいた。

やっぱり私は、自惚れ過ぎだよ。


なんだか恥ずかしくなってきて、髪を耳にかける。


帰ろう…


そう、思った時だった。



慌てた様子の足音が聞こえてきて、思わずそちらに視線を向ける。


角から曲がって此方に来たのは、息を切らした和君だった。



……嘘…どうして…っ…。



「…ッ!」



どうして…いるの?


私の顔を見て同じことを思ったのか、目を見開いてこちらを見ている。


そして、私は気付いた。


和君が…伴奏の楽譜を持っていることに…