「あんな酷い態度とられてもめげないなんて、健気だね〜」



…そんなこと、ない。

ただ諦めが悪いだけで、和君にとったらとんだ迷惑な人でしかないんだから。


反応の仕方がわからなくて、黙り込んだ私に、瀧川先輩は突然距離を縮めてくる。

耳元に唇が近づいて、思わずビクッと震えた。



「俺、そういうの大好き」



何処と無く甘い声で囁かれたフレーズ。



「…え?」


「ううん、なんでもないよー?それじゃあね、頑張って!」



聞き返せば、瀧川先輩はいつものおちゃらけた笑顔で笑いながら、手を振り歩き始めた。


…なん、だったんだろう。

瀧川先輩は…不思議な人だ。


それにしても…合唱、部。


確かめに…行こう。


そう決意し、手をギュッと握りしめた私。


この時は、まだ知る由もなかったんだ。

和君がどうしても、私を担任の先生から遠ざけたかった理由をーーー。