でも、直ぐに止めた。
いや、違う…動けなくなったんだ。
笑っているのに、笑っていないこいつの目が、あまりにも怖くて。
なんだ、こいつ…ムカつく…ッ…!
「違うならいいんですよ。心置きなく狙えるんで。雪ちゃん可愛いし、付き合うことになったら報告しますね」
挑発半分、本気半分。
あんなに可愛い子いないから、もちろんこれからもアタックする。
流石に無理矢理どうこうはもうしないけど…。
「あー、そうそう。そのことで呼び出したんだよ、君を」
奴はやっぱり表情一つ変えず、こちらに歩み寄ってきた。
な、んだよ…
笑顔の奥に黒い影が潜んでいるような気がして、自然と後ずさる。
何故か奴からは威圧するような雰囲気が垂れ流されていて、遂に背後が壁になった。
ピタッと壁にくっついた背中。
ひんやりとはずの壁が、何故か冷たく感じなかったのは、きっと壁なんやより俺の体温が低くなっていたからかもしれない。