「とりあえず、雪ちゃん今日は教室戻んな。入学したばっかで道わかんなかったら俺が案内しよーか?」
私の背中に手を添え、心配そうに顔を覗き込んできた瀧川先輩。
その優しさにお礼を言いたいのに、大丈夫ですって言いたいのに、今にも泣きそうな顔を上げられなかった。
「真人、教室くらいわかるに決まってるだろう。お前は仕事しろ」
どこまでも私に冷たい、和君の言葉。
「あー…はいはい、雪ちゃん大丈夫?」
「は、い…ありがとうございます」
そういうのが精一杯で、私は下唇をぎゅっと噛み締めドアに向かって足を進める。
「じゃあね、雪ちゃん」
ドアを閉め、生徒会室をでる直前に聞こえたのは、瀧川先輩の声。
和君の声は、聞こえなかった。
バタン…という音を立て、閉まる扉。
…私、ここに何しに来たんだっけ…?
和君と…話に来たんじゃ…なかったっけ…?
「やっぱり…嫌われてるだけ、だよね…」
少しでも、期待した私が馬鹿だった?
もしかしたら和君は…って、淡い光を追いかけようとした私は…
「……好、きっ…」
ただ、それだけなのに。