【完】お前だけは無理。



ねぇ…


…あんたたちに、一体何があったのよ…?



「本当に、頭がおかしくなりそうなくらい…もう俺には…」



その先の言葉を、和哉君が言うことはなかった。


でも、わかってしまった。

この人の全てが、伝わってきてしまった。



ずっと不思議に思っていたんだ。


たくさんの人の好意を向けられ、愛され、尊敬され、

欲しいものは何でも手に入るんじゃないかと思う和哉君が、偶に抜け殻のような表情をすることに。


でも、和哉君、あなたは本当に抜け殻だったんだね。



ーーこの人の全身が、雪が愛しいと叫んでいる。


雪しか要らないと叫んでいる。


それでも、この人は雪を突き放そうとする。


きっとそこには理由があって、そこに他人が入ってはいけない。


雪と和哉君の間には、誰にも入ってはいけない領域があるんだ。