和哉君、あんたはいつも同じ顔で、何でも完璧にこなして、弱味なんて一切見せるもんかっていう人じゃなかったっけ…?
泣き顔は愚か、怒った顔すら見たことがなかった。動揺した顔も、昨日初めて見た。
周りから見れば全てが上手くいっているような人間で、運動も出来て素行も良くて、おまけに生徒会長で、
それなのに和哉君は、いつだって何かに絶望したような目をしていた。
何か…じゃない。
生きることに意味がない、まるでそんなことを思っているような気がした。
何かが足りないような、その何か以外は必要ない、とでも物語るように生気のなかった和哉君。
ごめんね、和哉君。
私、首を突っ込むべきじゃなかったのかもしれないね…
「……頼む、言わないでくれッ…雪にだけは、やめて…」
覚束無い足取りで私の元へ寄ってきた和哉君は、私の両肩を掴み、俯きながらそう言った。
喉から振り絞るような、もっと奥から必死に出しているような。
「俺が、何年も抑えてきたことを、潰さないでくれ…ッ」
私は見たことがない。
人が、こんなに必死になる姿を。
動揺する姿を、絶望する姿を。

