〈 お父さん、お母さん、どうして私に何も教えてくれないの? 〉




美月は床に膝をついたまま、ヒリヒリと痛む左の頬をそっと手で触った。




父と母は、間違いなく長島優子を知っている。




それなのに、長島優子について、何も言おうとしないのはなぜか?




そんな理由は一つしかない。




美月は今まで曖昧だった父と母への疑惑が、限りなく黒に近づいた気がして、悲しかった。




〈 もしかしたら、お父さんとお母さんは殺人犯……。

長島優子はお父さんとお母さんに殺されたの? 〉




美月の仮説が真実に少しずつ近づいていた。




でも、そのことに、決定的証拠はなかった。