「あの、綾瀬さん…」



次の日の昼休み。

穂果とお弁当を食べていると、名前を呼ばれて振り返る。



「河谷さん」


恭介のクラスに転校してきた、河谷由莉ちゃん。

確かにかわいい。
恭介が一目惚れするのもわからなくもない…。

…ていうかなんか、見たことあるような…。


恭介のやってるゲームに、こんな子いなかったっけ?




「あの、瀬見くんのことなんだけど…」



「セミくん…?」




蝉くん…?

頭にセミの帽子をかぶっている人を思い浮かべて、


「いや…私そんなセミ博士みたいな知り合い…」




「なに言ってんの、恭介くんでしょ」



テンパっていた私に、呆れたようなツッコミを入れる穂果。


ああ、瀬見くんね。


ずっと恭介、恭介って呼んでると、急に苗字で言われると分からなくなるなぁ。