「きゃっ!」

ぐいっ、と建物の影に引っ張られ人ごみの中から抜けられたのだが、別の恐怖がメルダを襲う。

「やだなにす・・」
「俺だ」

恐る恐る振り向くと、そこにはあの大きな戦士カインが立っていた。

「あ・・・カイン様?」
「大丈夫か?」
「え、ええ。ありがとう。助かったわ」

カインは掴んでいた右手を離す。掴まれた所が少し赤くなっていた。

「悪い。少し強く掴んでしまったみたいだな」
「問題ないわ、このくらい。それより・・・」

そこで見たカインの風貌は朝見たときより少し変わっていた。

長く顔を隠していた髪も後ろに流して、しっかりと顔が出ている。
つけていた鎧も外して動き易い服になっていた。