妖しく溺れ、愛を乞え

 なぜそんなことが……悲しいけれど遠い記憶を辿るような目をして話す深雪が、すっとため息をつく。

「だから、俺は母親の顔を知らない。よく似てるって言われるがな……そして、自身が呪われ、子が産まれるまで生き長らえたけれども、自分が消滅しただけではその罪は消えなかった」

「……どう、して」

「俺が、生まれた時に既に……呪い持ちだったからだ」

 呪い……持ち……?

「俺は、もうすぐ……消滅する」

 低く優しく言って、あたしを見る。

 いま、なんて。

「え?」

「消えて無くなる」

「ど、どうして」

 無くなるって、どういうこと。死ぬってことなの? 居なくなるの?

「消滅って、なんで」

「呪いは、ずっと前に目覚めて、俺の体を……蝕んでいる」

「あ……」

 あたしは思い出して口に手をやった。先日の、夜中の出来事を思い出す。あれがそうなんだ。
 あんな風にして苦しんで行くわけ……?

「蝕まれ、弱り切って動けなくなって行くだろう」

 弱々しく少し笑ってみせた。そんな顔、見たくないよ。

「俺が本当に動けなくなるまで、あとは自由にして良い。だから、それまで……」

 深雪の願いはそれなのか。ひとりで居たくなかったから。

「俺は雅と……一緒に居たい」