妖しく溺れ、愛を乞え



「呼んでな……だれぇ?」

「そばに居てくれって、呼んだな。聞こえた。お前は……」

 声の主を見上げると、揺らぐ視界に背の高い、切れ長の目の……。

「あたし、は」

 黒の中に、深い青。その瞳に映るのは、あたし。

「春岡……みやび……」


 きもち、わる。

「もう限界」

「お、おい」

 この人、誰だろう。

 もうだめ。考えられない。気持ち悪い。

 どこの誰だか知らないけれど、彼は、あたしのゲロを受け止めながら、きっと今日は最低の日だって思ったに違いない。あたしと同じように。