妖しく溺れ、愛を乞え


 ◇


 どれくらい飲んだんだろう。ネオンがぐるぐる回ってる。やけ酒ってこれだな、まさに。

 タクシーを呼んであげるからと言うミミさんを断って、外に出て来た。電車に乗らないとホテルまで帰れないのに、駅に向かいたくなかった。

 ひとりぼっちだ。帰るところが無い。行くところが無い。その事実が重くのしかかって、途方に暮れた。いままでは酔っぱらっても潤が居る部屋に帰ることができたし、そんなに飲むなよって言われて、飲み過ぎなんだからって怒られても、温かかった。寂しくなかった。いまは帰れない。もうあそこはあたしが居て良い場所じゃない。

 寂しくて悲しくて、うつむいた時、地面が歪んだ。涙が頬を伝って、アスファルトに落ちている。

「うう、う……う」

 寂しい。悲しい。誰でも良いからそばに居て欲しかった。なんでも良いから寄りかかりたかった。抱き締めて欲しかった。

「なんで……も……誰か、幽霊でも妖怪でもいいよ……う、寂しいよう。ひとりぼっちだよう……ねぇ、誰か、そばに居て。ねぇ」

 なにかにつまずいて転んでしまった。したたかに打った膝が痛い。酔って麻痺しているはずなのに、燃えるように痛い。

「骨、折れた」

「これぐらいで折れるわけないだろ。俺を呼んだのはお前か」

 誰かにぐっと腕を持ち上げられて、よろよろと立ち上がる。

「え?」

 男の人の声。誰? あたしを掴んで立たせて、肩を支えてくれている。

「俺を、呼んだな」

 なにを、言っているの。