妖しく溺れ、愛を乞え

「あたし、長生きするね。100歳は越えるつもりだから」

「おお、できるだけそうしてくれ」

「ヨボヨボになっても、歩くときに支えてよね」

「そうだな。こうやって」

 深雪の大きな手が、あたしの腰に添えられて、引き寄せる。

「雅の一生の間、ひとりにしないと約束する。寄り添って一緒に生きていく」


 いつ深雪に恋をしたのだろう。愛したのだろう。スタートもスイッチも、あたしにはよく分からない。

 でも、それでも、こんなに深く好きになることができる。心って不思議だね。


「あたしも。もうとっくに、そう決めているの」

 決まっていたの。

 あたし達は、ふたりになることが、決まっていたの。自分の心に正直に生きるよ。


「いま、あなたのお母さんの気持ち、分かる気がするよ」

 相手が誰でも、何者だろうが、種類が違っていたって、命の長さが違っていたって。きっと、こんな気持ちで目の前の恋を選び、深雪を産んだんだと思う。

 サァっと強めの風が吹いた。

 雪の里では、こんな温かい風は吹かないだろうけれど、でも、辛い思い出ばかりじゃなくて、温かい思い出だってあるに違いない。

 ふいに、抱きすくめられて、持っていたカゴを落としてしまった。ああ、野菜に傷が付いちゃう。