妖しく溺れ、愛を乞え

「これから、どうするんだ」

 圭樹が、落ち着いたトーンでそう問いかけて来た。

「もうちょっと体が戻ったら、そうだな。仕事しようかな」

「うちの会社に戻って来られても困るから。主にあたしが」

 あんなにヒヤヒヤして落ち着かない日々は、もうこりごりだ。
 圭樹が「じゃあさ」と言いながら、熱いほうじ茶を出してくれた

「うちの店で働いてくれると助かるんだけど。人手が足りないし休日は混むし。バイト辞めちゃったんだよねー」

 それは嬉しいお誘いだ。通勤に車が必要になりそうだけれど、それなら用意するだけだ。

「良いんじゃない? 深雪」

「蕎麦屋かー。そうだなぁ、良いかもしれないな」

 ゆったり笑って言った。

 まさかこんな風に深雪と圭樹がまた一緒になるとはね。あたしは毎日楽しく、ふたりを見守ることができそうだ。


「ねぇ圭樹。食べ終わったら、お庭を見に行っても良い? 菜園を見たいな」

「かまわないよ。じゃあ戻ってきたらデザート用意しておいてやるよ」

 デザートだって。なんて素敵なの。

「やったぁ~」

「圭樹は雅に甘い。甘やかし過ぎる」

「深雪ほど甘くはないと思うぞ」

「また始まったし、もう。ふたりともいい加減にしなよぉ」

 ふたりを宥めつつ、ツルツルのお蕎麦とサクサクの天ぷらを頬張る。喧嘩で食事がまずくなると言おうとしたけれど、そんなもの気にもならない程に美味しいから、無視しておこう。