妖しく溺れ、愛を乞え

「うわーん、美味しそう……」

「召し上がれ」

「うまそう。まだまだ体力付けなきゃいけないからなー俺」

 にこにこ笑顔で蕎麦にがっつく深雪。

「お前は雅ちゃん居るから良いだろう。それ以上食うな」

「ええ、おかげさまで。そりゃあもう毎晩」

「……やめてくれませんか……」

「いいよなー。雅ちゃん、たまに出張してよ」

 なにを言い出すんだろう。なんだよ、出張って。すると、深雪が顔色を変えて抗議した。

「だめだぞ! 絶対にだめだ。雅は俺のものだからな」

「ずるいぞ、お前ばっかり!」

 あたしはふたりのやり取りを聞きながら、平和だなと思った。

 薫り高いお蕎麦と、美味しいつけつゆ。香ばしくカラリと揚がった天ぷら。
 どれも美味しい。あとから知ったけれど、圭樹のお店は評判が良いらしく、休日ともなると混み合う名店だそうだ。知らなかったなぁ。

「はいこれ。自家製だよ」

 小皿にプルンと四角いもの。上に乗っているのはわさび?

「胡麻豆腐」 

「わぁ~あたし胡麻豆腐、大好き!」

「懐石に加えようと思って」

 ひとくち食べて、プルプル食感に思わず「幸せ」と口から出てしまう。深雪も「旨い」と言いながら食べている。美味しいって、幸せ。