妖しく溺れ、愛を乞え






「……」

「……び」

「……?」

「みや、び」

 ついさっきまで聞いていたのに、なぜか懐かしい。おかしいな、幻聴かな。おかしくなってしまったのかな。

 襖を開けて、締め切って蝋燭の灯りだけだった部屋に光を入れた。それに成らすように、閉じていた目を、ゆっくり開ける。

「みやび……」

 優しい声。大好きな声。愛おしさで涙が出るような、あなたの声。静かに振り向くと、あの優しい眼差しが、あたしを見ていた。

「どうして……?」

 かすれた声で、誰に聞いているのか分からない問いをした。さっき、深雪は終わったはずなのに。

「……戻ってきたよ。雅に会いたくて」

「み、深雪」

「ありがとう。俺……」
 
「う……っ」

 もう、堪えられない涙と気持ち。言葉にならなくて、寝ている深雪に飛びついて、大声で叫んだ。戻ってくれた。あたしの元に。死の底から、呪いの闇から。

「泣かないで、雅……ごめん」

「……うわぁぁああ……」

 吐き出して、吐き出して、声が出なくなるまで。温かい深雪の胸に顔を押し付けて。

 もう、離れないで。置いて行かないで。