妖しく溺れ、愛を乞え


 ◇



 足が痛くなったり、疲労から眠くなったりしながら、歩き続けた。本当に、圭樹が入口を開いた場所は遠かったんだな……それを実感させられる。

「……足が痛い……」

 急な斜面を登ったり崖を下ったりしないだけまだマシかな。それでも雪が多くて、足を取られるし体力も奪われる。

 どれくらい歩いたのかは分からない。時間も分からない。その時、歩いている雪の音が変わった気がした。

「?」

 フカフカで足を取られていた雪が、硬くなった。明らかに音が違う。サクサク鳴っていたのが、ザクザクという音に変わり、足元も取られなくなった。ただ、少し滑るかもしれない。

「着いた」

 ふいに、前を歩いていた圭樹がそう言う。

「ほ、本当?」

 正直、雪の里への入口を作るのが苦手なことに加えて、方向音痴なんじゃないかな、本当にこっちで合っているのかなんて、疑って見ていたんだけれど。

 雪の景色が、段々と開けてくる。そして、道が見えてきた。木が凍ってできる樹氷が、一本道をなぞって生えている。

「ああ、着いた。疲れたなぁ」

 のんびり言う圭樹だったけれど、表情は明るい。
 着いた。やった。やっと。ここに、深雪が居るはず。

「……やっぱり。強くなった。あいつの気を感じる。居るぞ」

「ほ、本当に?」

 あたしはなにも分からないけれど、圭樹だけは感じ取っている。なんだか少し嫉妬してしまうけれど。