妖しく溺れ、愛を乞え

「あとは、あの人はもうすぐ……死ぬ」

「おかしいね。妖怪に死ぬなんて言い方」

「あなたこそ、何者なんですか」

 急に現れたと思ったら、妙に深雪に執着しているというか……。

「俺は純粋な雪男だよ。親戚みたいなもんだな」

「親戚……? いとこさんとか?」

「違う。……まぁいい。俺の話につき合ってくれる? 雅ちゃん」

 少し考えて、どうやらさらったりはしなさそうだと判断する。
 遠くへ行かなければ大丈夫だろう。

「マンションの向かいにカフェがあります。そこに行きませんか」

「そうだな。立ち話もなんだし」

 わざと誘ったのに、躊躇無く来るということは、彼も人間界が長いのだろう。不思議な感じだけれど、知らなかっただけで、こうやって紛れて生活している妖怪はいる。

 道路を挟んで向かい側のカフェ。圭樹とふたりで横断歩道を渡り、そこへ入る。あまり混み合っては居なかった。
 ここで、少しだけ話そう。