妖しく溺れ、愛を乞え

「そう警戒するな。なにもしないよ」

「なにもしないって言って、するのが男」

 シュークリームが入った袋を拾い上げて、姿勢を低くした。

「いやいや、本当に。なにその構え。お前に興味など無い。好みじゃないし」

 ……! ちょっとそれ凄く失礼じゃないの。

「どうせあなたも女と寝てそのまま食っちゃうんでしょう」

「おいおい、深雪丸と一緒にするなよ」

「深雪がどうとか聞いてないです。深雪丸って言うと船っぽいから丸付けないでよ」

「丸付けたって付けなくたってドエロの深雪に変わりは無いだろ」

「……」

「……」

 ここでこんな言い合いをしても仕方がない。
 あたりは真っ暗で、人気も無かった。この間のこともあるから、油断できない。怖い……。心音がドクドク響いた。

「な、なにか、ご用でしょうか……」

「いや、深雪丸は元気にしているかと思って」

 この体が目当てじゃないのか。
 日本にどれだけの黄金血の人間が居るのか分からないけれど、夜道の一人歩きはできないね。本当に。

「……まぁ、なんとか」

「お前、どこまで知ってる?」

「お前じゃないです。雅です」

「あー……じゃあ、ミヤビチャン。どこまで知っている? あいつのこと」

 この人、深雪の何なんだろう。

「……なんか他種族との混血で産まれた雪の妖怪で、いままで人間界に紛れて生活している。尾島 深雪。現在うちの会社の専務。長期出張で仙台に来ていることになっていて。一応……一緒に住んでいます」

「それだけ?」

「あと、あたしは黄金血とかいう体質」

「ほほう」

 圭樹はじっとあたしを見つめている。銀色の瞳で。本当に、人間っぽく無い。深雪と違う。