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次の日、深雪は会社を休んだ。
今ごろは、部屋で暇してるんだろうな。DVDでも観て過ごすとは言っていたけれど。まさかひとりで外に出かけないと思う。
専務が休んでも、支店長が居るし。今日1日は静かに過ぎて行って欲しい。
明日はお休みだから、お出かけするんだ。ふたりで。楽しみで少しにやけてしまう。
「春岡さん、これ専務通ってるか知ってる? ハンコ無いけど」
「あ、まだですね。原価見たいって言ってたんですけれど。見たならハンコつくはずです」
部長が書類を持って難しい顔をしている。大丈夫。来週には元気に出勤するはずだから。
「そっか、じゃあ未決に入れておくかな。支店長も出かけてて居ないし」
「はい。来週いらっしゃったらお伝えしておきます」
「よろしく」
途中だったメールを作成してファイルを添付した。
「送信……!」
よし、送った。今日の仕事終わり。帰る。帰るって言ったら帰るんだから。今日は早く帰る。
「すみません。少し早いのですが、お先に失礼致します」
部長がまだウロウロしていたから、そう声をかけた。この一言がなかなか出ないから、いつまでもダラダラ会社に居ちゃうんだよね。良くない。
「おー……」
部長は変な方向に体を捻っている。どうやら壁にある時計を確認したらしい。
「早いって、定時は18:00なんだから、帰って良いんだぞ」
「はい。お疲れさまでした」
「お疲れ~」
デスクの上に散らばっていた書類やファイル、ペンなどを素早く仕舞った。ペン立てがガシャガシャ鳴ってしまった。うるさいから静かにね……まだお仕事中の人が居るんだから。
「お疲れさまでした。お先に失礼致します」
誰にも気付かれなくて良いんだ。初乃さんだけ手を振ってくれた。みんな忙しいんだよね……。そっと事務所を出た。
急いで着替えをし、ビルを出た。
深雪に連絡を入れる。電話をかけようかと思ったけれど、止めた。短い文で用件だけを伝える。
「これから帰ります。なにか欲しいもの食べたいものありますか……と」
ひとりでブツブツ言いながら立ち止まってスマホをタップした。すぐに返信が来る。



