しくしく・・・しくしく・・・



蒼子は外からすすり泣く声を聞いた。
気になって襖をあけると、小さな子どもの狐が泣いていたのだ。



「どうしたの?」

「しくしく・・・。大切なものを失くしてしまったの」




その狐は泣きながらそう言う。
蒼子は靴を履いて庭に出るとその子の側に寄った。




「どこでなくしたの?一緒に探してあげる」

「本当?」




子どもの狐は顔をあげると蒼子を見た。
蒼子はにっこりと笑ってそれにこたえる。


蒼子は狐の手を取り立ち上がる。




「こっち」




子ぎつねは蒼子の手を引っ張っていく。
蒼子は少し戸惑うが、すぐに戻ってくるから、と誰にも告げることなくついていく。